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爪下血腫

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「爪の下が内出血をした場合の応急処置法は?」という問い合わせが多いので、こちらにまとめました。

爪下血腫

足の指なのですが…    すずき 女性 会社員 20代 O型 大阪府

 こういうことは何処に(誰に?)相談すればよいか分からず、ちょっとすがる思いで相談します。
 私のダンナ様なのですが、祭り男で(大阪の岸和田だんじり御存じですか?)実は祭り本番の2週間前に、試験曵きといって当日さながらの練習をするのですが、そのとき、利き足である左足に力をいれ過ぎ親指のつめが真っ黒になってしまいました。親指全体が腫上がっているのは当然ながら爪の生え際も変色し、爪までも浮き上がる程になっています。 腫れや痛みは1週間程たち、おさまっていますが1週間後には本番(2日間!)があり、それを思うとちょっとかわいそうです。 そこで、左足の親指にテーピングをまく方法があれば教えて下さい!!
 ダンナ様の友だちにも同じ症状の人が多いらしく、その後爪は抜けるのだそうですが、約1年かかって生えた爪はまた1年後の祭りで同じことになるそうです。

 

    Re:足の指なのですが…    いなげ

 すずきさん、こんにちは。文章から推測するとおそらく指の靭帯損傷とかではなくて爪の下に内出血した「爪下血腫」だと思われます。だとすると溜った血液を出してやることで解決します。痛みを和らげるためということではテーピング効果は期待できません。受傷後まだ1週間ということですので、次のことをやってみて下さい。
1.細い針金のような物−例えばクリップを少し引き伸ばした物−を用意する
2.一端をライターで赤くなるまで熱し、内出血して青黒くなった爪に押し当てる。爪に穴が空くまで数回繰り返す。
3.貫通すると「ビュッ」と血液が出てくるので、爪が黒くなくなるまで絞り出す。この際、汚れないように予め下に何か敷いておく。
 「爪下血腫」であれば、これで痛みは嘘のようになくなってしまいます。受傷後すぐであれば爪が抜け落ちるのも回避できます。穴を空けた後は清潔に保って下さいね。
 ところで祭りの時は白足袋か地下足袋を履いているのでしょうか。そして現在履いている足袋は親指が窮屈ではありませんか?もしそうなら指先に余裕のあるもう一つ大きめの物を履くことによって予防できますので試してみてください。

岸和田のだんじりというと死傷者が出るほどの勇壮な祭りですよね。テレビの中継で民家の屋根を壊しながら曳いていく様子を見たことがあります(^o^)。私も神輿をやっているけど、お祭りって馬鹿になれて良いですよね(^-^)。

 

  ( ̄□ ̄;)!!   すずき 女性 会社員 20代 O型 大阪府

  …ありがとうございます。 この内容をダンナが帰ってきてから読ませましたが、めーちゃくちゃビビって、こんなのデタラメだ!!と言っていましたが、ホント、ちょっと恐い内容ですね。 足袋の窮屈、窮屈じゃないはあまり予防にはならないみたいで、回りの人も大きめを履いたからと言ってあまり変わるものではないと言っています。治療法はあっても防ぐことはできないんですねー。 でも、彼も1日目に再発した場合、この治療法を試してみるとは言ってます。(ホントかなぁ〜) 祭りの最中に、他人に踏まれてその部分から出血する場合があるらしいのですが、この出血と、穴をあけて血を出すのとではまた違うのですか?
 私もこの地に嫁いで祭りを知りましたが、ほんとバカバカしくってたまにうんざりする時もありますが、やはりいいものですね〜。

 

  大抵は・・・(^^;    いなげ

 >この内容をダンナが帰ってきてから読ませましたが、めーちゃくちゃビビって、こんなのデタラメだ!!と言っていましたが・・・・・

  実はこれ、大抵の男性はビビります(^^)。でも、女性は結構平気のようですよ(^o^)。 指先の窮屈さが関係ないとすると、きっと気づかないうちに踏まれているのでしょうね。私も神輿のときに時々なりますから。で、この場合の処置ですが、爪の下に内出血がある場合は、やはり出した方が良いです。内出血により内圧が高まったための強い痛みが出すことによって嘘のようになくなるんです。爪を剥がさないためにも是非やってみて下さい。そしてそのあとに、踏まれたことによって生じた打撲の治療を受けて下さい。 あ、クリップを熱するのは消毒の目的もありますが、そうじゃないと穴が空かないんですよ(^-^)。

 

  なんとか終わりましたー    すずき 女性 会社員 20代 O型 大阪府

 無事にお祭りが終わりました。 で、足のほうですが、1日目が終わってまたひどくなるようなら実行しようね。って言い聞かせていたのですが、前回の左足をかっばて今度は見事に右足が爪下血腫になってしまいました。 それでも彼がこばむので、せっかくアドバイスしてくれたのに…って思っていると、2日目にその部分を踏まれて出血すると言う事態に。
 無事お祭りも終わって自宅に戻り、恐る恐る血に染まった足袋を脱いでみるとそこには!なんと!きれいな爪がありました。 踏まれていると言うこともあり、爪の付け根に傷がありますが、ホントに血を出しきるとキレイになるんですね。 若干の痛みはあるのと、付け根に傷ということで、もしかすると抜け落ちてしまうかもしれませんが、今は消毒したりして治療しています。ありがとうございました! ちなみに、今年の祭りで他町ですが、死者が出てしまいました。 やはり祭りは楽しくなくちゃいけませんよね!

 

  無事というか    いなげ

  何というか、まずは終わったようですね(^^)。 爪下血腫の痛みの正体は、内出血がどんどん溜るのに 逃げ場がなくなって内圧が高まった為の痛みなのです。だから圧力を解放してやると楽ぅーになります。浮き上がった爪は押さえ付けて、なるべく透き間が空かないようにしておきましょう。

>やはり祭りは楽しくなくちゃいけませんよね!
そうですね。痛くなくて楽しいのが一番です(^0^)。

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元気な78歳

  78歳の男性患者Kさん。膝を痛め来院しているがそのほかはいたって健康。 廃品回収に出そうと紐でまとめていた男性週刊誌を見つけ、
  「先生、ゴミに出すんだったら俺持って行くよ。」
  てっきり収集所まで持って行ってくれるのかと思って、
  「膝痛めた人にそれは・・・。ちょっと悪いな。」
  「そうじゃなくて貰っていくのよ。奇麗なねぇちゃんの(ヌード)写真があるから、近所の爺ちゃん集めて鑑賞会やろうかと思ってよ。」

 きっと「接骨院から貰って来たんだ」と宣伝してくれることでしょう。全く達者な方々です。

 

75歳の振り袖

  75歳女性の患者Mさん。前腕部を負傷し治療を行っていたが経過良好。
 ある日患部をマッサージしていると上腕内側部の皮膚・筋肉がたるんでいてユラユラ上下左右に揺れている。
 笑いを取ろうと思って私、
 「Mさんのここ 、随分揺れるねぇ(^o^)。」
  そうしたらMさん、
 「んだな。振り袖みたいだなぁ(^0^)。」
 『内股』をすかされ、ものの見事に一本負けをしたのでしたm(__)m。

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いつまでも若くありたい

 患者さんサービスのため待合室に設置してある体脂肪計を見つけた84歳女性の患者Sさん。
 「私も測ってみたいんだけど、いいかしら。」
 「あぁ、いいですよ。セットしてあげましょうか。身長は何cm? 体重は? 年齢は?」
 「身長はね、145cm。体重は50kg位かなぁ。歳? 歳は83歳。」
 言われた通り数字を入れていくが、年齢でエラーがでてしまう。説明書を調べたら計測できるのは80歳までとのこと。
 「あれぇー、Sさん。ごめん、ごめん。年齢制限で引っ掛かっちゃった(^o^)。この機械、80歳までしか測れないんだって。」
 「・・・・・(^^;。そうなの?じゃあ仕方がないわねぇ。80歳って言えば良かったねぇ(^^)。」
 でもSさん、実は84歳なのに一つサバを読んだのを、私は気づいていますよ。

 

チャーミーグリーンのような

腰を悪くして来院している87歳のDさん。先日から83歳の奥様が手首を骨折して来院されたことについて話し始めました。
 「先日は家内がお世話になりました。」
 「いえいえ。大変だったですね。だいぶ痛がっていたでしょう?」
 「いやぁ、痛い、痛いって大騒ぎだったよ。」
 「そりゃあ骨が折れたんですから、痛いですよ。でもそろそろ落ち着く頃かな。」
 「○○○はね、病気や怪我らしい怪我したことないから、痛みに弱いんだよ。俺らと違って・・・。」
 ん?聞こえなかったわけではありません。奥様のお名前と聞き違えたかなと思ったのでしたが、Dさんは今一度おっしゃいました。
 「あのこは病気や怪我らしい怪我したことないから、痛みに弱いんだよ。俺らと違って ! 」

うーん素晴らしい。87歳になって奥様を「あのこ」と呼べるなんて。チャーミーグリーンのCMに出てくるような素敵なご夫妻に心の中で拍手を贈ったのでした。

 

          
気にしない気にしない

58才、女性患者さんのHさん。梅雨時期なのに好天が続く天気について話し始めました。
 「随分お天気が続くよね。」
 「そうですね。かれこれ1ヶ月、雨らしい雨が降ってないかも。」
 「去年も空梅雨だったかしら?先生、覚えてます?」
 「いやー、全然。最近、頭が飽和状態なんで、これは覚えておかなければと思ったものしか覚えられません。次から次と忘れてしまいます(^^ゞ。」
 「先生もそうなんだ(^0^)。私も。最近は覚える事にエネルギーが必要になって来てるのよ。」
 と、苦笑いしました。
その後、いかに物忘れをするか、どんなエピソードがあったかを互いに披瀝し合って盛り上がり、治療も終わる頃、
 「ところで、なんでこんな話題になったんでしたっけ?思い出せないんだけど・・・。」と私。
 「ん?何だっけ・・・。忘れた〜。」
まあ、どうでも良い事はお互いすぐに忘れましょうね。

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ヨッパライの自己弁護

ビールで乾杯

 全く酒飲みというのはいやしいものだ。毎晩、毎晩飲んでいるくせに、誘いがあると「断われないから」などと心にもない事を言う。笑顔を悟られま いとするが、「口許が笑ってるわよ」と女房に言われ、いそいそとネオン街へと繰り出す。
 居酒屋の暖簾をくぐる。学生からスーツ姿や作業着の人、色んな客がいるが、 とにかく騒々しい。話し合う大声、店員のオーダーを通す声、一人一人にパワ ーを感じる。このバイタリティーがあれば株価暴落も何のその、日本の未来は明るいと思えてしまう。
 まずはビールで乾杯。

河岸を変えよう

 酒飲みは犬型と猫型に区分できるらしい。犬型は人につくタイプ。ママやホステスが変わるとその先についていく。「センセイ、今度お店変わったの」 などと電話でも来ようものなら、ハイハイと出かける。女好きに多いらしい。 猫型は店につくタイプ。ホステスが変わろうが店を変えない。酒好きに多いそ うだ。 経営者には猫型、ホステスには犬型の酒飲みがいいらしい。俺は、と考える。ホステスについて行くこともないが、その店には自然と足が遠のくかな。やっぱりどんな区分法にも例外がある。
 「次行こう。」
 2軒目は、女の子のいるスナックがいい。

カラオケでも一曲

 「あら、センセイ。いらっしゃい。」
 酒場での敬称は大体先生か社長と決まっているが、俺の場合は「センセイ」である。カタカナだ。本人の意識が左右するのであろうが、漢字とは微妙に響きが違う。
 「さっき帰ったお客さん、私の事大根足って言うのよ。」
 女の子が口をとがらせて言う。
 「それは褒めてくれたんだよ。」
 水割りを口に運び、煙草に火をつけ勿体ぶって言う。
 「太いのを?」
 「いや、白さを褒めてくれたの。大根の事、すずしろって言うだろ。昔、着物の裾からチラリチラリと時折見える足のなまめかしい白さを、色っぽいから大根足って言って褒めたんだよ。」
 「本当?」
 大きな目で俺を覗き込む。
 「ああ本当。俺、ほねつぎだから足には詳しいんだ。」
 酔いがまわって訳のわからないことを言う。
 「アメリカでは太い足の事、ピアノの脚って言うんだよ。かわいいでしょ。君もピアノの脚って言われたほうが気分いいんじゃない?」
 「よくない。結局太いって言う事でしょ。」
 酔うと余計な事を言ってしまう。気まずくなって、たて続けに煙草をすう。マイクがまわってきて、十八番を一曲唄う。
 「次、行こうか。」
 3軒目はこじんまりしたスナックがいい。

まずい、目が坐っている

 「俺の飲み友達が、脂肪肝になって禁酒してるんだ。これだけ飲むと俺も可能性があるなあ。」
 相棒が言う。
 「俺、この間肝機能検査やってもらったよ。」
 「へえ。」
 「4・5日上腹部が痛くって・・・。家族中で酒の飲みすぎだって騒ぐし、ウンチは白くなるし。まあ黄疸はなかったんだけど。」
 「何だったの?」
 「ただの消化不良じゃないかって。肝機能は何ともないって、太鼓判押されたよ。」
 言いながら俺は、まるで「禁酒しなさいと言われなくて本当に良かったね」と言っているような内科の女の先生の笑顔を思い出した。
 「ふ一ん。じゃ、俺も大丈夫だ。」
 相棒が安心している。だが、待て。その三段論法はおかしい。小前提の「お前の肝臓は何ともない」の前の大前提「俺とお前は同じ酒量だ」というところ に、「しかも同じ肝臓の抵抗力を持つ」が抜けている。それがなけれぱ「ゆえに俺の肝蔵も何ともない」という結論にはならない。
 まあ、入院したらお見舞は行ってやるぞと思い相棒を見ると、まずい、目が坐っている。

代行車呼んで

 「あんなに遅くまで何してるの?」
 よく女房が聞く。
 「酒飲んで話してると、いつの間にか遅くなってる。」
 「よくそんなに話す事があるわね。」
 呆れ顔である。
 「あるんだな、これが。」
 俺はそう答える。でもこの答えは半分正しく、半分間違っているらしい。飲兵衛の友人が言うには、 「禁酒している時に飲み会につきあったんだ。」 「ヨッパライというのは実に下らない、つまらない話を延々と話すんだ。 しかもくどい。何度も何度も同じ話を繰り返す。」 「ところが禁酒が解けて一緒に飲むと、下らないと思った話が実に楽しいんだなあ。時間も忘れて話し込んでしまう。本当に不思議だ。」

 相棒は目が坐ってくると、そのうちカウンターにへぱりついて寝る。そして30分もするとトィレに駆け込むのだ。もどした後更に飲む。仕様がない。一通り終わるまでつきあわねぱなるまい。
 ようやく収まったところで時計を見る。
 「あれ、もう3時だ。そろそろ帰るか。」
 「ママ、代行車呼んで頂戴。」

宿酔

 3時まで飲めばやはり午前中はつらい。動くと頭はガンガンするし時にはこみ上げてくる。患者さんの前では精一杯明るく振るまうが、「先生顔色悪いよ。」 などと言われドキッとする。仕事を終え、女房が「今日はお酒無しね。」なんて勝ち誇ったように言うが、とんでもない。二日酔いが収まった晩の酒は、本当に美味しいのだ。
 全く酒飲みというのは、いやしいものだ。

※平成4年11月号山形県接骨師会会報に掲載されたものを修正しアップしました。

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バクラム

 失敗した。ほねつぎとして迂澗だった。
 以前、カナダを旅行してきた友人が「熊の金玉の骨のマドラーをみたよ」と言ったときのことだ。俺は、「そんなのある訳ないじゃないか。解剖学で金玉(正確には陰茎)は海綿体でできていると習ったし、生理学では、その海綿体に血液が流れ込み充血し固くなると習った。 だいいち柔道整復理論で、骨折した場合は対牽引を行い直圧を加え整復する、ただし尿道の損傷を合併するので医師に委ねるとか、大きさが変化しやすく固定肢位の保持が非常に困難だとか習っていない。見まちがいじゃなかったら、きっとインチキに違いない。」と一蹴し、折角の土産話に水を差したのだった。
 ところが、先日開高健の本を読んでいて驚いた。カナダでの狩りについてのエッセイの中で、「クロクマを倒し皮を剥ぎ、ペニスの骨を抜き、その血の滴っている骨をマドラーにしてウィスキーを飲む、山男のセレモニーだ」と書いてあるのだ。まさかと思い調べてみると、あった。「陰茎骨(バクラム)」。ヒト以外の大低の動物にあるらしい。犬にも猫にも。 うーん、知らなかった。そういえぱ獣医学は勉強していなかった。
 ヒトにも骨があったらなあとか、ヒトにだけ骨がないのは不公平だなどという議論はこ こではやらないが、ヒトに骨がないのは、男性の海綿体と、女性の「強い刺激でなくてもOKよ」というお互いの進化のせいらしい。 仕方がない。友人には俺の浅学・無知を報告しなければならないだろう。胸を反らせて、 得意気な友人の顔が浮かぶ。

  正月早々、行儀の悪い話で済みません。 しかし、倒した獲物のバクラムをマドラーにして酒を飲むなんて、最高の賛沢、最高の酒の飲み方ではないかと思う。俺も一度でいいから体験してみたいが、ちょっと無理だ。どなたかカナダ旅行を計画している先生、バクラムをお土産に買ってきて頂けないでしょうか。 山で飲む時に使いたいのです。
 一体に外で飲む酒というのは美味しい。海でも川辺でも。女の子に囲まれて飲むより好きだ。たぶん。
  山登りをやっているのだが、必ず冷やしたビールとバーボンを持っていく。最高峰でビールをグイッとやり、テントを設営したあと、ボケッとしなからバーボンをちぴりちびりとやる。太陽のぬくもりと風を感じながら、自然と同化していくような気分になる。そんな点景にバクラムのマドラーはふさわしいと思う。

 さて、もう正月の「屠蘇」は召し上がりましたか?うちでは正月にはにごり酒を飲む。 本物のドブロクといきたいところだが、いいルートがないから中々手こ入らない。最近御無沙汰しているが、以前によく通っていた居酒屋の親父に、「特別ルートで入ったから内緒だよ」と御馳走になったことがあるが、あれは本当に美味しかった。森敦の「月山」の中に、七五三掛部落の人々が、よそ者に対して非常に警戒心が強いのは、ドブロク密造を摘発する税務署職員じゃないかと疑うからだ、というようなくだりがあったと記憶しているが、ドブロクの美味しさの中には、そういった秘めやかな香りも含まれているような気がする。
 ところで俺は、ドブロクをなみなみと注いだ茶碗に(ドブロクは茶碗に限る)バクラム をさして一度飲んでみたいと思う。それには理由がある。何故かって?金玉の語源によるのだ。金玉はもともと「酒の玉(きのたま)」だった。ここで言う「酒」はもちろん清酒 ではない。白く濁ったドブロクのことである。だから金玉は、ドブロクの玉という意味で ある。ドブロクにドブロクの玉の骨をマドラーにして飲む。どうです、楽しそうでしょう。

 なんとも話が支離滅裂になった。マドラーmuddlerが派生したmuddllには、支離滅裂という意昧もある。きっとバクラムのマドラーで話を撹搾したせいかもしれない。

※平成6年1月号山形県接骨師会会報に掲載されたものを修正しアップしました。

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